これは、名古屋にある日本最古とされるビヤガーデン、浩養園のスタッフから寄せられたエピソードである。
その日は台風が接近していました。時間とともに風雨が強まり、ご予約は次々とキャンセル。さすがにフリーのお客様もいらっしゃいません。私はスタッフのほとんどを帰宅させ、数名だけで営業していました。
そんな中、一人の男性がご来店されました。
浩養園では、お一人様は珍しく、しかもこんな台風の日にわざわざご来店いただいたということもあり、強く印象に残りました。
そして数日後。
そのお客様がまたお一人でご来店されたのです。やがて月に５回、６回と、頻繁においでくださるようになりました。
あるとき、そのお客様は通ってくださる理由を教えてくださいました。
「最初に来たとき、台風で天気は最悪だったけど、ビールがとってもおいしくて感動した。なんだか、すごく元気が出たんだよ！」
私は、その言葉に打たれました。
なぜなら、そのお客様の最初のビールを注いだのが私だったからです。
自分が注いだビールに「感動した」とまで言われたのは、入社以来初めてのことでした。
一生懸命練習し、勉強して注いだビールに感動し、好きになってくれる人がいる。こんな喜びを味わえるこの仕事は、本当に素晴らしいと改めて感じ、誇りを持ったきっかけでした。